yoshihide nakajima
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2008.07.19
category ; diary

酔った人に尋ねることがあり、酔っているだろうと想像して電話をすると、酔った声で受話器が取られる。そして、その酔った声は、今度の機会にじゃがいもの調理を僕にすることを依頼した。じゃがいもの調理に、何も思い入れもなく、そしてそれが得意な訳ではないが、なんのこっちゃ分からないので、とりえず、するということにして、尋ねたかった事を聞いて電話を切る。

先日ペドロ・コスタ監督のコロッサル・ユースという映画を見に行く。撮られたものへの私的で唐突な誠意として、それを見ることから始めたかったので、事前の予習を全くせずに行く。また事後も同様に直後の時間においては、自分で感じたかったので、映画館に掲示されていた監督等のインタビューなどは読まないつもりが、そのうちの一つの少しだけをトイレを待つ途中に読んでしまうという不覚。

始まりのナイフは闇に後ずさり、最後にたどたどしくキラリと光って消えた。頼まなくては書けない手紙、その手紙の内容は他者によって常に変奏され、当事者はその手紙の今の状態を絶えず記憶することを呼びかけられる。そして、もはや誰の誰への手紙かもわからない、だが、決して出されない手紙は、きっと届くといわれ、相手から返事がこないことも「だろう」と予告される。手紙の内容は、差出人の口によって一度だけ話される。それはたどたどしく彼の言葉として変奏され話されていた。映画の中で2つの隔たりのある時間が描写され、その代替えの不可能さと、同時に相似性を感じながら、闇から光への向かう中間色を、常にゆらすデジタルノイズに、地下の廃墟のような工場とカメラの前のおびただしい数の小さな羽虫がまぎれているのを見る。デジタルでは再生するのが難しいと聞いた黒へ落ちる寸前の、低階調で起こっている運動が好きだった。僕は、この映画が撮られた街を知らない。正確に、この移民の街がどのようにして生まれ、どのような歴史をたどり、どのように現在なっているのかを知らない。現状、この映画を通して知ったことが全てだ。だから、これが特定の場所とそこの人について撮られた映画だとすれば、僕が見た/見なかった映されたことについて、より具体的な寓意を感じる人達がきっといるのだろうとも想像した。

コロッサル・ユース。聞いた事があると思ったら、ヤングマーブルジャイアンツの曲名だった。ということをトイレに行く前に通りがかりに、インタビューを斜め読みして知ってしまった。これについては、自分で符合させたかったが、目が読んでしまったという残念。
妻の家への帰還への代償として、私が贈与する物について話され、「そんなことはどうでもいいから、ワインを飲みながら僕のことを思い出してくれ。」と、全部を台無しにする最後の言葉。妻への私の誠意が物について語られ、その後で最後の物として、同時に私の率直な欲望として、妻が持つだろう私についての記憶が、私によって自分勝手に差し出され、与えつつ奪う。

2008.07.12
category ; diary

今日、夕刻の寸前、何気なくタバコを吸って仕事のことを考えていると、前ぶれなく雷鳴がとどろき、その後に、ゴォーという雷雲の音がする。こういう登場は、やけに音楽的で困る。午前中は、白い程に明るかった外は、気がつけば、グレートーンになっていて、屋根にあたる小さな雨粒の弾ける音がする。気がつけば、車が水しぶきをあげる程に、雨は強く降っている。気圧の変化のせいか、立て付けの悪いサニタリーへの開き戸が、換気口からその影響をうけて、自動的に少し開いたり、閉まったりを繰り返している。そして、大きな雷鳴がまたとどろいた。レイ・ブラッドベリの「何かが道をやってくる」を思い出した。と、雨はやんだ。あの雷雲は移動し、雨を「どこか」まで降らせて、「いつか」の時点で霧散をするはずだと思う。ここにだけ立ち寄る奇特な雲はいない。

昨日は、華雪の展示での機材の調子を見に、le bainに立ち寄る。しばらく機材と音の鳴りの様子をみて、その後、外に出てタバコを吸っていると、そこでも雨が降り始めた。 雨の中、モンシロチョウが目の前を横切る。僕が雨粒にあたっているのだから、 それにも雨は降っている。良く見ていると、時折、その高さをガクリと下に下げながらも飛行は続けられた。それは、結局落ちなかった。そして、雨をさけるように、街路樹の枝にとまった。その始終を見ていて、僕は思ったより雨にぬれた。当日、夕刻前より酒を飲み始め、夜になり華雪の約束に同席させて頂き楽しく酒。まだ少し足りぬと家の付近まで帰っても酒。およそ酔う。暗い中で、テーブルで、少しだけ紙に線を書き、手を洗って眠る。

次回、展示予定の森岡書店の外には、川が流れている。これを展示に、取り込めないか考えていた。川の色を、平準化して色を抽出しようと思い、その手がかりを探そうとメモとして、携帯で写真をとる。周囲の写り込みと、光の反射による偏差が大きすぎることぐらい最初から分かっているべきだったが、分かっていなかった。川というものは、隣接する景色と分ち難く思える。また、僕が色を探すという意図を持って見る時点でこれは光とも分ち難いことを示している。根本的に考え方か、もしくは、この場合に指す色というものの範囲を考えないとだめなんだと、それだけが分かる。また、展示のタイトルは勝手に決めたつもりになっている。まだ誰にも伝えていない。

また明日は、華雪の展示の撤収。音の記録も撮るつもりだから、今日仕事を終えてから、色々と改善点があった自作のマイクを作り直す予定。予定まで到達できるか不明。

2008.07.04
category ; diary

と、時間は過ぎ。既に自分の個展は終わった。無所属新人、その上おっさん初めての個展は、思い返せば、かくもあっけなく始まり終わった。最終日には、初日の反省より酒は飲まず、弱音で、割と反復感のあるギター等を使ったインプロを1時間程度やった。スピーカーやギターアンプを複数ならべて、回遊式庭園というより、少し時代を進めて固定化された視点場のような場所を、ただし、複数・重複させるように作りながら時間を進めた。

また、一度ある帯域で決め込んだ場所を、フィードバック等で壊しては、また元の帯域、音量へ戻して、場所を安定化させるようなプロットで進めた。相当あいまいに進めたので、安定とはここでは比喩でしかない。

幾人かに、ライブが終わった後に、感想や壁に掛けた画面の説明を求められたが、既に飲酒。だから、正確に説明ができたかどうかは、定かではない。ごめんなさい、弱音は初めての上、寝不足、そしてライブが久しぶりすぎて、年甲斐もなく緊張して、たった少しのアルコールが強くききました。

そして、華雪の展示を行うle bain mitateのB1Fの空間に、mnemonとしてサウンドデザインの協力する為、その準備に追われる。それをナベさんに手伝ってもらって、evalaくんと搬入し、設置、調整も終わる。最後はどうなることかと思ったが、この作業を通じて、色々と学ぶ事があり、また、気がついたこともあった。

フィールドワークにおける観察者の参与の問題のように、また完全なホワイトボックスがないように、音も音響的な要素以外にも、地理、社会的な位置づけとしての、特定の場所と関わって鳴る。大きな音量で場所を場所を飲み込んで鳴らすか、場所に沿うよう小さな音で鳴らすか、また、そのいずれでもあるような場所との関わり方をするかについての選択があることを知った。ショールームとしても機能している空間なので、レセプションの日には大き目の音で鳴らさせてもらって、後は割と静かに空間と調停をするような調整とした。

詩人柏木麻里さん(詩の同人誌「径」のデザインをさせて頂いているのだが、その中同人でもいらしゃる。)の展示を拝見しに、茅場町の森岡書店に出かける。声のように、文字は上へ下へ、前へ後ろへ、歌われるように配されていた。背面の時間を蓄えた壁のテクスチャが、その声に対する定在波として流れているように聴こえて見えた。とても好きな展示たった。しばらく時間を忘れて、目と文字の浮いた距離だけを見ていた。

同時に、自分自身が、現代に作られる「多く」の視覚詩を面白くなく感じる理由についても、なんとなく気づかせてもらえた展示だった。良かった。

また、9月にも、自分自身もこの森岡書店で展示を予定しているので、その下見の目的もあり、柏木さんの展示も拝見できるちょうど良いタイミングだと思い、この日、突然来訪させて頂いたのだが、店主の森岡様には、とても快く対応いただいた。そして、しばらく展示や本などについてお話をさせていただいた。

ひとしきり話を終え、店内にあった本を一冊購入する。仏語で書かれたの「文字」について書かれた一冊。ロバート・フランクのアメリカンズの初版は、このビジュアル百科辞典のシリーズの中の1冊として刊行されたと説明いただいた。

自分の展示について、店内のアンティークのワークランプなどのインテリアと、並んでいたリシツキーの書籍のせいか、その20世紀初頭にロシアであったようなギッシリ詰め込こんだ展示イメージになって仕方がない。それも何度か寝れば忘れられるかな、と思う。森岡様にも、間引いた展示のほうが、良い結果が出ることが多い空間ですと言われる。悩む。

2008.07.01
category ; exhibition, works

title : 華雪ノ展示「雨日」
artist : mnemon (the project by evala & yoshihide nakajima)
date : 2008-07-01 to 2008-07-13
place : Lebain mitate (Tokyo)
material : pc, speaker.

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